1.英作文には「和文英訳」と「自由英作文」の2種類がある。2.「和文英訳」には「誘導型」と「翻訳型」の2種類がある。3.語彙力と、例文暗記による表現のストックが前提条件。4.自由英作文は「論理構成」「内容」「文法」が3つの柱。5.添削は必ずしも効果的ではない。
こんにちは。英語講師の三浦淳一です。
簡単に自己紹介をしますと、現在はN予備校・学びエイド・医学部受験専門予備校YMSなどにて講師を務めており、予備校講師歴は約20年。著書のうち代表作には『全レベル問題集 英語長文』『入門英語長文問題精講』(旺文社)などがあります。
StudyFor編集部より
三浦淳一先生のN予備校での授業映像です。
今回は英作文の勉強について。
英作文が得意だ、という受験生は、ほとんど会ったことがありません。
英作文は受験英語の中でもっともハードルの高い分野と言えるでしょう。
語彙力、文法力のみならず、プラスαの能力が要求されます。
だからこそ、他の受験生に差をつけることもできますから、難関大学を目指すみなさんには、ぜひ頑張って取り組んでほしいと思います。
その他の学習方法・勉強法については↓をご覧ください。 目次(項目をクリックするとジャンプできます)
【人気予備校講師が解説!】大学受験英語の勉強法と計画の立て方
2種類の「英作文」
現在、入試問題で英作文が出題される場合、以下の2つの形式が中心となります。
1.和文英訳
従来の出題形式。与えられた日本語を英語に訳すという問題。
2.自由英作文
特定のテーマ、課題文や資料が与えられ、それについて自分の意見を英語で書くという問題。
近年の傾向としては、1が減少し、2が増加しています。
また、今まで英作文を出題していなかった大学が、自由英作文を出題し始めることもあります。なお、英検などの語学検定試験も自由英作文を出題します。
英作文の基礎力
和文英訳、自由英作文に共通する基礎力について。
まず、当然ですが語彙力が必要です。単語を覚えるときに、「英語→日本語」だけでなく、「日本語→英語」の変換もできるようにしておく必要があります。
ただ、単語集を覚える際に最初からこれをやっていると、なかなか先に進めなくなってしまいますので、2~3周してある程度覚えてからがよいでしょう。
次に、表現パターンを数多く身につけること。
単語や熟語をどんなに覚えても、「~する人が増えている」とか「~年ぶりに会いました」といった日本語を英語にすることはできませんね。
このような英作文でよく用いる表現のストックを頭の中に作っておく必要があります。
これらが完成したら、あとは和文英訳なり、自由英作文なり、自分の志望校の出題形式に合わせた練習をしていくことになります。
和文英訳にも2パターン
大学入試の英作文には「和文英訳」と「自由英作文」の2パターンがあるのはおわかりいただけたと思いますが、実は「和文英訳」もさらに2種類に分けられます(これは私が勝手に分類しているだけですので、一般的な分類ではありません)。
1つは「誘導型」、もう1つは「翻訳型」です。
「誘導型」は、出題者の頭の中に「書かせたい英文」があり、その英文を書くように誘導するような日本語になっているものです。
例 過去について知れば知るほど、過去から学ぶことの大切さを教えられます。(青山学院大)
この問題は、明らかに【The 比較級~,the 比較級...】のパターンを書かせようとしています。
これに対し、「翻訳型」は、もともとある日本語の文献から切り取ったものであり、英語に訳すことを想定していないものです。
例 猿は木から落ちても猿だが、議員が選挙で落ちれば、ただの人なのだ。(防衛医科大)
英語でどうやってニュアンスを伝えるのか、悩んでしまうような日本語ですよね。
当然、「誘導型」よりも「翻訳型」の方が難易度が高くなります。また、「誘導型」は解答のバリエーションが少ないので、受験者数の多い私立大学で、他方「翻訳型」は国公立大学で多く見られる傾向があります。
「誘導型」は、まじめに受験勉強をしていれば、誘導に気づきますが、文法や熟語をちゃんと勉強していないと誘導に気づかず、点数を落としてしまうことになります。
「翻訳型」は、いわゆる“和文和訳”の能力が求められます。
つまり、与えられた日本語はストレートに英語に訳しにくいので、「英訳しやすい日本語」に変換する必要があるのです。
例 最適の人間を最適のときに活用するという考え方は、裏を返すと使い捨て思想につながる。(東北大)
「裏を返す」といっても、本当に「表と裏を逆にする」(英語で言えばturn ~ inside outなど)ではありませんよね。
そこで、「反対の側面から見ると」と解釈してseen from the other sideとするとか、もっとシンプルに「反対に」と解釈してconverselyなどとしてもよいでしょう。
「使い捨て」といっても、もちろん「使い捨てタオル」「使い捨てコンタクトレンズ」みたいな意味ではないのですから、disposableなどとしてもダメですね。
「排除する」と解釈してget rid of~で表現するのが適切でしょう。
この例からもおわかりのように、ここでの変換がおかしいと、できあがる英文も、問題の日本語とかけ離れてしまいますので、得点を期待できないことになります。
結局、英語の力だけでなく、日本語を正しく読み取る力も要求されているわけです。
自由英作文は自由じゃない?
自由英作文というと、自由に書けばいいのだから、簡単だと思われがちです。
しかし、それでは入試という場で、採点を行って段階的な評価をすることができません。
“自由”英作文とはいえ、一定のルールに従って書かなければ、高得点は狙えません。
私は、生徒の英作文を見るときに、以下の3つの観点から評価しています。
1.論理構成:接続語などを効果的に用いて、明快な構成で書かれているか
2.内容:説得力があるか、わかりやすいか、問われたことに答えているか
3.文法・語法:文法的なミスがないか、スペルミスはないか
自分の答案を見直すときにも、このような観点からチェックしましょう。
添削って必要?
英作文といえば添削!と考えがちです。たしかに、自分が書いた英文を誰かにチェックしてもらうのは、いい勉強になりそうです。
ただ、私の経験上、添削をして伸びる人とそうでない人がいます。さらに言えば、添削が逆効果になることさえあります。
いちばんダメなパターンとしては、まったく文法的になっていない、語句の使い方も間違えた英文を持ってきて「添削してください」という人。
めちゃくちゃな英文を、何とか添削してギリギリセーフの英文に直したところで、その添削後の英文もかなりぎこちない英文ですから、それを今後に生かせるわけではないのです。
だったら模範解答を理解して覚えた方がはるかに効果的です。
「僕はこのように書いたのですが、これで正しいですか?」という質問も、受け付けないことにしています。そもそも、正しいかどうか確信がない表現など、英作文で使わなければよいのです。
「正しいと確信できる表現がありません」という場合、前述の「表現のストック」ができていないので、英作文の問題練習をする段階に達していません。
結局、添削をして効果があるのは、9割方正しい英文を書いている人に、本人が気づかないちょっとしたミスを指摘してあげるような場合に限られます。
そこまでのレベルに達していたら、身近な先生やネイティブの方に、自分の書いた英文をチェックしてもらうのもよいと思います。
ちなみに、私自身、英作文の添削などしてもらったことはありませんが、TOEICや英検1級のライティングで満点を取得していますし、私の知っている英語上級者の人たちも、今まで添削などしてもらったことはないという人がほとんどです。
おすすめの参考書
市販の英作文の参考書は、とても質が高いのだが、解答例の英文が洗練されすぎていて、「受験生には真似できないなあ」と思うようなものが多いです。
解答例を見て、自分が書いたものとかけ離れていても、あまり気にしないようにしましょう。
1.『英作文基本300選』(駿台文庫)
表現のストックを増やすのに最適な例文集。ただ「暗記しなさい」という例文集が多い中、文法的な解説もしっかりしていて、理解して覚えることができます。さらに、前述の「和文和訳」のトレーニングもできるという、素晴らしい本。
2.『英語表現力養成新・英作文ノート』(日栄社)
薄くて安いけれど、中身は充実。これも表現のストックを増やせるし、問題練習としても必要十分。
3.『大学入試英作文ハイパートレーニング和文英訳編』(桐原書店)
↓「英作文ハイパートレーニング」について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
-
-
【塾講師が書いた】英作文ハイパートレーニングの使い方・勉強法・評価・レベル
例文暗記、問題練習を1冊で済ませたいならこちらの本。文法の解説が詳しいのもおすすめポイント。同じシリーズの自由英作文編もよいです。
4.『英作文講義の実況中継』(語学春秋社)
3と同じ著者の本。講義録スタイルなので読みやすくわかりやすい。また、和文英訳と自由英作文が1冊にまとまっています。ただ、解答例はできすぎなので、参考程度に。
5.『英検準1級 英作文問題完全制覇』(ジャパンタイムズ)
大学受験用の参考書ではなく、英検対策書だが、自由英作文の論理構成はこれを参考にするとよい。「型にはめたような英文を書かせるのはいかがなものか」といった批判もあリますが、出発点としてはこれでよいと思います。
最後に、宣伝っぽくなってしまいますが、私がN予備校で行っている英作文の授業について。文法項目別に英作文を学ぶカリキュラムで、教材は「例文暗記→語句整序→和文英訳→入試問題」の構成。授業では、これに加え、毎回自由英作文の課題を出し、講評を行います。
ネットの授業で、しかも生放送で、英作文を扱っているのは、私の知る限りN予備校だけなので、ぜひチェックしてみてください。